ドイツのアイスコーヒ事情
アイスコーヒーと聞いて日本人の頭に浮かぶのはおそらく、氷を入れた透明なグラスに深煎り豆を使ったブラックコーヒーが注がれているものだろう。一昔前は最初から甘いものが提供されることが多かったが、最近では提供後にガムシロップなるもので自ら甘みを加えることが多い。また、ミルクではなくコーヒーフレッシュなるものがよく使われる。夏場にスッキリ飲めるのはやはりたっぷり氷を入れたブラックだが、このアイスコーヒー、外国ではなかなか飲めないのである。
学会で旧東ドイツの可愛い街に行ったとき、ドイツにしては珍しく暑い時期だった。暑いときはあまりないので、基本的に冷房がない建物も多い。その時は意外と湿度も高く、ドイツ人も珍しがる暑さだった。アイスコーヒーをがぶ飲みしたい気分だった。
広場のカフェのテラス席に座りメニューを見ると、アイスコーヒーがあった!ドイツ語だと「Eiskaffee」。まさにアイスコーヒーである。早速注文して運ばれてきたものは、なんとパフェであった。下に少しコーヒーが見えるが、その上にアイスクリームやホイップクリームが沢山盛りつけられ、ナッツやチョコチップなどがまぶされ…ほぼ飲み物ではない。というかやはりこれはパフェだ。暑苦しくも甘ったるいものを食べなくてはいけなくなってしまった…。
この反省を踏まえ、次の店ではホットコーヒーと氷を頼んでみた。ドイツのコーヒーは濃くておいしい。それを冷やせばおいしいアイスコーヒになるだろう。運ばれてきたものは確かにホットコーヒーと氷であった。しかしやはり意図は伝わっていなかった。小さな皿に氷が二粒くらいのってきた。もう少しくれというと、更に二粒、何をするんだと不思議そうに持ってきた。
次の店では、コップに氷を入れてくれと頼んだ。だから皿で来ることはなかったが、コップに氷が数個。やはり大量の氷にコーヒーを注ぐという概念がないので、意図が伝わらない。もっとくれと言ってやっといっぱいになった。
その時宿泊したホテルには小さなバーがあり、その夜は近くの大学生がバイトできていた。英語ができるので、日本のアイスコーヒーの作り方を話して、ドイツ語の簡易マニュアルを書いてもらった。次の日から、それを持ってカフェに行き、「アイスコーヒー」を楽しんだのであった。
では他の国ではどうか?
イタリアは、エスプレッソの国である。単にカフェといえばエスプレッソが出てくる。イタリア人はエスプレッソに氷を入れて薄くすることを嫌うので、やはり日本風アイスコーヒーは存在しない。あるのはカフェ・フレド「Caffè Freddo」。冷カフェである。エスプレッソに砂糖を入れたものを冷蔵庫で冷やしたもの。そしてやはりクリームが入ったりホイップクリームがのせられる事がある。甘い飲みものである。カフェ・シェケラート 「Caffè Shakerato」というものもある。これはエスプレッソと砂糖と氷をシェイカーでシェイクしたもの。一瞬で冷たくなり、氷はグラスに出されないので、カフェはほとんど薄くならないが、当然甘くて、量が少ない。生クリームなどがのることもある。やはりがぶ飲みブラックアイスコーヒーはないのである。
スペインには、カフェ・コン・イエロがある。Café con Hielo = Coffee with Iceである。その名の通り、普通のエスプレッソと氷を入れたカップが出てくる。氷入りカップに自分でカフェを注ぐ。何故最初からカップにカフェを注いでないかというと、甘くするためである。普通はカフェに砂糖を入れて好みの甘さにして、氷入りカップに注ぐ。ブラックでも飲めるのだが、やはり量が少ない。そして氷も控えめだ。カフェをダブルにして、氷を沢山もらえばそこそこ日本のものに近くはなるが、大きなコップに並々とするには何杯のカフェが必要だろう。
世界中どこでも同じものが飲めたらそれはやはり面白くない。色々な文化があって、色々な人々がいて、色々な食べ物があるから、楽しい。





